3年目にして思うこと
某MMORPGを遊んで3年。
▼オンラインゲームなんて時間を持て余したNEETか主婦か学生の遊びでしょうと小馬鹿にする人もいる中で、そんな世間の声が怖くて手を出せなかったのに、何故かスルッとオフラインゲーム気分で初めてしまった社会人の自分。
▼何度も話している話だから耳タコかもしれないが、私は物語が好きでRPGが好きでファンタジーが好きで。小さい頃から魔法とかドラゴンとか薬草とかそういった書籍を読み漁ってきた。エルマーの冒険が私のルーツなのは間違いない。
それでも物語には終わりがあるし、必ずしもハッピーエンドとは限らない。RPGの中にはバッドエンドを迎えたものも多くある。
ハッピーエンド主義者というわけではないが、私達が生きている毎日は4割の苦しいことと5割のどうでもいいことと1割の幸福で出来ていると思っている。
だから、物語の終わりにはせめて架空の世界の終わりには笑って終わりたいと、願うものである。
▼しかし困ったことにオンラインゲームのストーリーには終わりが見えない。その地に一定数以上のプレイヤーがいる限り冒険は続いていく。
自分の人生と同じだ。例えば、卒業とか合格とか就職とか結婚とかそういった転機によって一度そこまでの自分、例えば「大学生だった自分」にエンドロールは流れるが、そのロールのあとにはすぐさま次のストーリーが待っているのである。
悪く言えば逃れられない呪縛であり、辞めることが出来ないものであるが、よく言えばロマンや未知の世界に心踊ってしまう瞬間でもある。その先に離別や苦難が待っていることを知っているにも関わらず歩みを進めてしまう。
オンラインゲーム3年目にしてわかったことは、これは確かに劇毒であり私にとっては驚くほど相性の良い娯楽であった。
▼さて。それほどまでに気に入っている趣味を見つけたというのに、ここ1年で私のログイン率は下がっていて、現在はほぼ週末1日のみのプレイヤーと成り下がった。
何故か。飽きた?やる事がない?そんな訳がない。人間関係が煩わしくなった?特にそういったわけでもない。
原因はそのゲームの運営チームにある。
▼このMMORPGの開発・運営チームは、「ユーザーと共に作るゲーム」「お客様が一番喜んでくれるものを作る」という立派な思想を掲げている。お陰で痒いところまで手が届きそしてわざわざ業務の間を縫ってイベントを開いて対話の場を作ってくれる。
最悪なことにどのようにしてゲームが作られているのか、どのようにしてユーザーのために動いているのか、仕事の説明まで懇切丁寧にしてくれるのだ。開発環境が見れてしまう(無論実装後のものだが)という前代未聞な事案も何度か起こっている。
ロマンとしか言いようが無い。知らない世界、働いていないのに別の職種の毎日を知ることが出来て、物が創り上げられていく様子が見えるのである。幸せとしか言いようが無い。そうゆうところも好きなのだ。
▼そんなに好きなのにじゃあなんで遊ばないんだよ。
遊ばないんじゃなくて「遊べない」のだ。
私は自己表現が正直苦手である。上っ面な会話しか出来ないつまらない人間である。自覚はある。
それでも矢張り人間として生きていくのであれば中々自己表現せずにはストレスフルで壊れてしまうと思うのだ。
だから昔から、絵を描いたり写真をプロの元で勉強したり文字を書いたり歌を歌ったり文章を作ったり。
そんな創作という部分で自己表現をしてきたのだ。
そこに最高峰レベルのゲーム開発の仕事現場を見せられて、そのプロ中のプロたちが「まだ足りない、まだ上を目指せる」と努力する姿を、3年間見せられたらどうなるか。
結局そこに触発されて、どうにもこうにも自分の無力さや無能さを思い知り、必死に働いているのだ。仕事が好きなわけじゃない、表現する手段が文字か写真か絵か映像しかない自分。それでもそういった学校は出てこなくて、普通の職に就いている自分はジワジワと様々な技量をつけて行って、プロに追いつくしかないのだ。
言葉で上手く心を伝えられないなら、プロ以上の努力をして、別の何かで誰かに自分のことを知ってもらいたいのだと思う。
中途半端は嫌いだ。他人を傷つけたり迷惑をかけるのも嫌いだ。綺麗事だけじゃ生きていけない世界に自ら飛び込んだ。覚悟もないままに溺れながらやっと毎日を過ごしている。
▼家について鞄を下ろした時には正直ご飯を食べる気力もないほど精神を削りきって布団に倒れるのだ。
労働時間は特に長いわけではない。
誰かから強要されているわけでもない。
勝手に生き急いでいるのだ。
逃げ場を敢えて作るなら、あれだけのプロたちが妥協もせず深夜遅くまで働き詰めで作ったものに触れてしまったのが悪い。
生き急がずにはいられない。焦っているのだ。私は結局1つも自分のことを表現できずに人生を終わるのではないかと。
▼遊びたいけど遊ぶ気力が残ってない。疲れ果てているし肌もボロボロだ。でも自分が努力するしか自分を救う術はない。誰も助けてくれない。
週末のログインはご褒美なのだ。そしてそこでまた力の差を見せつけられて、苦しいまま月曜日に戻っていく。
そんな、3年目の毎日。