Mick Radio Memo

名も無きオンラインラジオのお喋り&台本担当ミックの反省と、何でもないようなネタのメモ。

放送事故は予測可能回避不可能

 第3回774ラジオでの話。

 
  オンラインゲームには、「エンドコンテンツ」というものがある。普通のゲームで言うところの、「裏ボス」やら「隠しダンジョン」といったところだ。
普通のゲームと同じところは、敵が異常に強かったり、ギミックを解くのがとても難解であるところ。
そして普通のオフラインゲームと違うところは「仲間がいなければクリアできない」というところである。その仲間はあらかじめ用意されているコンピューターのキャラクターでは無い。
画面の向こうにいるであろう、生身の人間様の仲間ということである。
 
例えば。
隠しボスに挑む時、万全の準備をしていくとしよう。それでも負けてしまったら、普通にセーブポイントからやり直して、レベルを上げたり攻略情報を見たり。何度も勝手にやり直してクリアすればいいだけのこと。そこにかける時間は自分の自由である。飽きてしまったらやめればいい。ゲームなんてそんなものだ。
 
しかし、オンラインのエンドコンテンツの場合そうはいかない。全員仲間は生きている人間なのだ。
とある人は学生で、とある人は社会人で、とある人は就活生で、とある人は主婦で。きっとそんなバックグラウンドを抱えている人々が、時間を合わせて全員で攻略していくというものである。
 
自分のミスで全滅してしまった場合なんて、きっとキャラクターが受けているダメージよりも、キャラを操作している中身の人間の方がダメージは大きい。あくまでこれは私の場合だが、胃薬を正直所望した。(勿論そんなことで飲んでいたら肝心の時に効かないので、ホットミルクで凌いでいたが。)
 
オンラインのエンドコンテンツで致命傷になるのは、戦闘中のミスだけではない。
元々のプレイヤースキルや、息の合わせ方、装備性能、そして通信環境。相手や敵の攻撃とのタイムラグや画面の処理落ちなんかも非常に厄介な敵だ。そういった、「問題」を元々抱えているプレイヤーは、中々エンドコンテンツに挑戦し辛い。大事なところは仲間の時間を貰っている所。全員が同じ位のスタート地点に立っていないと、時間の無駄になる事も暫しあるのだ。「問題」を抱えながらもクリア出来るほど、エンドコンテンツは優しくできてない。
想像してみてほしい。普通のゲームでコントローラーのボタンの一つが動かない状態で、裏ボスに勝てるように設計されているだろうか。答えは、否である。
 
前置きが長くなったが、かく言う自分も「問題」を抱えたプレイヤーだった。エンドコンテンツに行きたいかと問われればNOである。自分からわざわざ嫌われに行くほど、マゾではない。
 
が。今年に入って最新のハイエンドコンテンツにチャレンジし、クリアをした。
理由はあえて触れない。人間のヤル気やエネルギーの源は、思いも寄らない要因が関連していることもあるのだ。
1ヶ月半かかった。勿論全てのログを取ってあるが、何度読み返しても良いものだ。
周りは大層な迷惑を被ったことだろう。問題を抱えて1ヶ月半も修行僧のような生活を娯楽であるゲームで行ったのだ。それでも、私は嫌な思いひとつしなかった。出来た人たちばかりである。
仲間には感謝しても仕切れない程の恩が出来てしまった。
到底返しきれそうにない。
 
うちのギルドのメンバーはきちんと距離感の取れる大人である。無神経に踏み込んできたりしない。いつもふざけていて偶にマスターに怒られたりしてる。だから励ましの言葉も、優しい言葉も、ない。でも言葉の端々や毎日の行動からどれだけ大事にして貰えていたかが見て取れてしまうのだ。勿論きっと相手にそんなつもりも恩を売ったつもりも気遣ったつもりも無いと思う。自然とそうしてくれていた。当たり前のように。
 
だから、この1ヶ月半のやり取りや一緒に遊んだ時間、どこを切り取っても、今の自分の心の許容量をオーバーする。ラジオできっとミッチーはクリアおめでとうと言ってくれると思っていた。
普通に有難うっておちゃらけてふざけて、笑ってやり過ごそうと思っていた。
たかが、ゲームの裏ボスをクリアしただけの話である。たったそれだけの話である。
 
それでも、おちゃらけた言葉の最初の一文字さえ、声が滲んでバレてしまっていた。
誤魔化そうと夢中で喋ったから、後から聞き直してみれば何の話かわからない。
時系列も言いたいことも滅茶苦茶だった。
 
勿論、ここまで書けばお分かりかと思うが、声はグズグズである。
最後は号泣。ミッチーの普通のフォローのお陰で放送が成り立ったようなものだ。
予想はしていた。こうなることを。
だが回避はどうやら、私にはまだ修行不足だったらしい。
 
優しさのキャパオーバーは、大人になると苦手になるものである。